道に迷って新たに道を見つけた人は、道の見つけ方を知っている。

「よあけの焚き火」の土井監督はまさにそんな優しさを持った人でした。

能楽師狂言方大蔵基誠さん親子がモデルとなったドキュメンタリーのようなフィクションのような不思議な世界観が美しい信州の冬の映像とともに語りかけてくる。心理カウンセラーとしては、深い深い自分との対話が始まる素晴らしい映画。テーマは家族、親子、、。しがらみや孤独、多くのものを沢山の角度から訴えかけてくるのに決して押し付けではない。そんな素敵な映画で私はある美しい風景に出会います。

霧ヶ峰と呼ばれるこの地方は一年の多くが霧に包まれていて、道に迷うことも多い、と。そしてその場合は「鐘」を鳴らして道に迷わないようにしているのだとか。

そうか!見えないものを見ようとして光を当てたりしても結局は霧に紛れて道を見失ってしまう、だから見るではなく聴く、に切り替えて、いのちを救っているのだと、ハッとしました。

「鐘がものをいふ
霧だ、霧だと
鐘がものをいふ
生きろ、生きろと」

長野県霧ヶ峰高原にある塔に刻まれている平林たい子氏の詩だといいます。

見えないものを見ようとあがくのではなくて、今ひとつ耳を澄まして沢山の音を聞いてみよう。私の中で人生がまた一つ大きく変わっていくのかもしれない素敵な出会いでした。

映画の最後の答えは、私たち1人1人の心の中で見つかるのかもしれません。

トークライブは映画館に集まられた一般の方々にマニアックな心理学のお話を。終わった後のディスカッションは15名以上のアイディア生たちが集まってワイワイとご飯食べつつ。これからもこういう機会をもっていきたいと思います。

よあけの焚き火、3月末まで東中野でやっているので是非皆様観てみてください。

パンフレットに浮世のコメントも載ってます。