フィギュアスケートの
メンタルトレーニング
試合当日

全日本選手権、大きな試合です。
たくさんの観客が溢れ、
多くのメディアの方々が選手達を
取り囲んでいます。

スタッフとして選手に
同行させて頂いた私は、
リンクの横がかなりの寒さだという事に
気がつきます。

コーチやスタッフの皆さんは
ここで選手との
コミュニケーションをとったり
今から本番をむかえる選手達の
メンタルを安定させたりしています。

試合前の緊張感が、
ピンと張りつめた空気の中で、
そこ、ここに漂っています。
今から試合を見ようとする

観客のざわめき

期待に満ちた空気感が
充満していくにつれ、

選手達の緊張感と興奮は
少しづつ少しづつ、
高まっていくように感じます。

本番までの過ごし方

その間選手の過ごしかたは、
というと、、、

選手達は控え室で、
選手同士、雑談をしたりして、
和気あいあいと過ごしています。
試合前の過ごし方は
選手の性格によってマチマチなようです。

選手仲間とさりげなく
お喋りをしている方が
リラックスできる選手。

一人でもくもくと
アップをしている方が落ち着く選手。

いろんな選手がいます。

私がいた試合では
当日の練習の合間に

選手達は廊下や
競技場の裏の関係者以外入って来ない
スペースを自分で探して、
ルーティーンとして、
決められたアップをしっかりやっている
というイメージです。

アップの時間は選手によって
様々ですが、

自分が何番目に滑るのか、
だから何分前からスタートするのか

などを考えて、
分単位でスケジュールが
しっかりと決められています。

しかもほとんど自己管理です。
個人スポーツってそうなのですよね。
つまり、試合前の選手は和やかに
雑談をしているように見えても、

一人一人がこれから行われる

自分自身の演技の
イメージを意識しながら、

本番のその時間に向かって

モチベーションやテンションが
最大限、良い状態になっていくように、
調整をしていきます。

戦いは始まっている

時々、試合前に移動している
選手を見つけて
写真を撮って下さい、
  とか
サインをして下さいという
ファンの方がいらっしゃいますが、

メンタルトレーナーの立場からすると
試合前はちょっと勘弁してあげて欲しい
感じなんですよね。

何故ならば試合前は、
選手は分刻みでアップをしていたり
集中力を上げている時間だからです。
移動中や何もしていない
時間のように見えても、

サインをしたり
写真を撮っている間に、
プツンと集中力が途切れたり、

時間がなくなってしまって、
何となく気障わしく
移動をしなければいけない

という事になってしまう時も
あるからなのです。

だから、試合前の選手が
無愛想であまり良い
対応をしてくれなくても それは、

今、選手は、
すでに心が闘っているということ。

是非、ファンの方は
御理解いただきたいと思います。

今から行われる大切な試合にむけての
メンタルトレーニングは
もうすでに会場に入る前から
始まっているのです。

ファンもチームの一員

選手にどうしても
コミュニケーションをとりたいのならば、

選手に対して、大きな声で
声をかけてあげて下さい。

「OO選手頑張って!」

「OO選手応援しています!」

明るく元気になる声で!

ああ自分を
応援してくれている人がいるのだ、
励ましてくれる人がいるのだと

そう思うだけで選手は

よし頑張ろう!

やろう!

という気力が充実して来ます。

名前を呼んであげるのがポイントです!
その明るいストロークが
どれだけ選手の心の支えになるかわかりません

選手は、みな、この試合のために
人生の莫大な時間を捧げています。

長い長い時間をかけて

トレーニングをして身体を鍛え
壮絶な練習を繰り返しています。
わずか数分の演技の中に、
人生の全てをかけている

と言っても過言ではありません。

選手本人はもちろん
指導者の方だって
人生をかけて指導されています。

スタッフの方や家族の人、
選手とともに、多くの人たちが
今日のこの試合のために
人生のエネルギーをかけて過ごして来た。

それがトップアスリートの
晴れ舞台である大きな試合

と言えるわけです。
ですから、

ちょっとした緊張やプレッシャーが
心を患わせ、
メンタルの乱れで
それが台無しになってしまう

というのは、とても残念な事のように
思われます。

そのためにメンタルトレーナーがいるのです、

私はもちろん、ファンの皆さんも
チーム一丸となって選手のメンタルを
上げていけるような、
勝たせてあげるような、
そういったメンタルを元気にする
チームになっていければ、
とても素敵ですよね。

そして氷上のステージへ

さてそんな感じで、
自分の番が呼ばれるまで、
選手達は緊張やプレッシャーと
闘いながら過ごし、、、

やがて晴れ舞台に滑り出していきます。
わずか、数分に、その人生の輝きを
すべてぶつけていくように。

滑り、

跳び、

スポットライトをあびて

汗を飛ばしながら、

懸命に輝くのです。

拍手!喝采!

演技が終わると 一人一人が
またリンクの外に戻っていきます。

成功して嬉しかった人

失敗して悔しかった人

それぞれが自分の思いを込めて
演技の直後から振り返りをし、
そして次の演技に備えようとします。

感情の乱れをなるべく早く整え
そしてまた研ぎ澄まされた
集中力をもって戦い続けられる人

そういうメンタルの力が
フィギュアスケートには、
とても大切なような気がします。

冬のスポーツとして華やかに
私たちを魅了し、
楽しませてくれるフィギュアスケート。

今日のお話が、
これからフィギュアスケートを
楽しむ時の参考にして頂ければ幸いです。