これはNEWS ZEROだけの話でもないし、この番組だけが悪いのではないと思います。
ストレスに関しての理解と配慮が足りていない。それでも無関心になり始めるメディアよりは、社会課題として取り上げるメディアの方が、私はいいと思っています。
ウクライナ心のケア交流センターには、たくさんの取材が入ります。
日本人は熱しやすく冷めやすい。
ウクライナ支援も心の中ではなんとなく終わったことと思っている一般の人にウクライナの人たちのメッセージを届ける事は、とても意味はある事と思います。
だけどそれが誰かを傷つけることになっては絶対にいけない！
そこでウクライナ心のケア交流センターでは、催しなどがある場合、メディアの方には集合時間より前に来ていただき、３０分程度、代表の浮世から直接レクチャーさせていただいています。その内容を少しお伝えします。
①多くの催しは、参加の時点でメディアの取材の可、不可を確認しています。
また写真はいいけどインタビューはいや！など人によっては気持ちが異なりますからそこも聞きつつ、取材NGの人が間違って写真や動画に映り込まないように、きちんと事前のレクチャーでお伝えします。
私たちがSNSなどに掲載する写真も事前に承諾を得た方の写真だけを掲載しています。
②取材オッケーとはいえ、惨事ストレスで苦しむ人が多い中、質問には繊細な注意を払って！とお願いしています。
とくに戦争体験を具体的に聞き出すことは、NGですが、ここがいつも難しい。
取材である以上、事実確認のためにどうしても細かく聞かざる得ない。
そのメディアの方の気持ちはわかります。だけど、考えてみてください。
死体を横目で見ながら必死で国内避難したとか、食べ物がなくて生の野菜齧ったとか、避難したヨーロッパで住む場所なくて野宿した（若い女性）とか、、。
そんなこと思い出したくもないし、口にするのも恥ずかしい、と思いますよね。実際には、ここには書きたくないくらいのもっと凄惨なことだってみんな体験している。
だから質問はなるべく繊細に気をつけて下さい！と思うのです。
③ご本人が離すのがしんどくなったり、気分が悪くなったりしたら取材はやめてください、とお伝えしています。そしてすぐにカウンセラーを呼んでくださいと。カウンセラーを同席させてもらって取材を受けていただくこともあります。フラッシュバックが起こった時の迅速な対応なためです。
④繰り返しの質問や、感情を揺さ振る質問は心の負担になるので避けてくださいとお伝えしています。
「戦争をどう思いますか？」と何度も聞かれても答えはいつも複雑だし、心で混乱や葛藤をしながら彼女たちが答えていることを理解して差し上げてください。
「家族に会いたい」「辛い」「悲しい」と言って欲しいメディアの人の気持ちは
わからなくはないですが、初めて会う人にそれをどこまで話せると思いますか？
ウクライナの人たちは皆、誇り高く、慎み深い素晴らしい人たちです。
苦しい日々に、なるべく弱音を吐かないと頑張っている。だから、前向きに「ウクライナのために支援してくれてありがとうございます」とか「感謝します」と言葉にする。本当にすごい。
心の痛みを聞いている立場の私からすると、その言葉で涙が出そうになるし、彼女たちを心から尊敬してやまないです。
だから、主催の人たちには「あなたが今回のイベントでウクライナの人たちと親しくなって『この人になら話してもいいな』と思える関係性を作ってくださいね。そしたら本音が聞けるかもしれませんね」とお伝えしています。
⑤最近、突然「カウンセリングの現場にカメラ入れさせてください」というお申出がありますが、無理！無理！無料！とお断りしています。守秘義務のことを持ち出すまでもない。
人の心の痛みを誰かにお伝えするのであれば、やはり時間をかけて、信頼関係を作って、その上でのホントの本音なのだと思います。実際、カメラを持たずとも私たちの催しに毎回参加してくれる新聞社の方とか、その場だけの通訳ではなくてウクライナ取材スタッフのおられるTVメディアとかもおられます。また個人的にボランティアとしてウクライナの人たちのサポートをしてくださる番組の方とか。そういう気持ちは伝わります。
メディアの人は忙しい。いつも「NEWS＝新しい事」を短時間で作り上げて発信しなければならない。時間のかかることは難しいかもしれない。だけど、ウクライナの人たちの、そして心のサポートはぜひ、ゆっくりと長期的に、丁寧に。
メディアの方々は彼女たちが本当に言いたいこと、の代弁者として発信して欲しい！と強く願っています。