大船渡高校の関係者は母校を誇りに。選手は出たいし監督は勝ちたい!今回の判断は誇りある決断】

夏の高校野球予選、大船渡高校の監督が話題のエースピッチャーを出さずに決勝で敗れたことが、賛否両論で話題なっています。メンタルトレーナーとして多くのスポーツの現場にいることが多い中で感じたことをお伝えします。

今回あることを思い出しました。それは私がメンタルトレーニングを担当していたある大学でのこと。

その大学は多くの五輪選手を輩出する超名門校。私が担当する選手たちも全日本選手権で上位を狙い、世界選手権へ、そして五輪へと明確な目標をもち頑張る選手たちでした。

そんな大切な全日本選手権でのこと。

レギュラーの選手が怪我をして、急遽繰り上がりで試合に出ることになった選手の不安を取り除くのが私の仕事でした。

試合に出れなくなった選手は悔しくて泣いていました。そして「怪我なんかしても絶対できます!試合に出たい!」と言っていました。

それを監督が「まだこれからがあるから。焦るな、焦るな」となだめていましたが、彼はよほど悔しかったのでしょう。代わりの選手に対しても「オマエを一生許さねえ」と怒っていました。その後プレッシャーに押しつぶされそうになる代理の選手のメンタルケアを行い見事団体は入賞。

選手の試合に対する情熱は私たちの想像を超えます。もちろんです。この日のために毎日血の滲むようような努力をしてきたことが試合に出れず、全て無駄になるのですから、何が何でも出たいというのは選手の当たり前の情熱。

それを否定はできません。

だけどその一回の無茶が、選手生命を潰してしまうことかあるのです。これからの一生を左右することになるのです。

だからこそあの時の監督は「無理をするな、これからだ」と諭し続け、批判されても選手交替を決断したのでしょう。
私はその監督の姿勢を見てこの方なら信頼できる!と深く感動したのを覚えています。

監督だって勝たなきゃ自分もクビになるリスクがある。だけど、それをぐっと抑えて、選手の将来を考えることこそがアマチュアスポーツの本来でありスポーツ教育の根幹だとかんじました。

だから、今回の大船渡の関係者の皆様は自分たちのことを誇りに思ってほしいですね。

「出れなかった他のナインが可愛そう」というのは、そんなことないですよ。エース抜きであそこまで戦えた選手は間違いなくみんな一流です。

OBの皆様や学校関係者の方々も、誇りに思ってください。自分たちの母校は、名門なだけでなく、選手を日本一大切にするすごいスポーツ教育をしている学校なんだと。

きっと来年多くの優秀な選手たちが入学してきます。私が選手の親でもこんな監督の元で活躍してほしいと思うから。(無理な練習や試合で怪我をしてスポーツ推薦取り消される若い学生のなんと多いことか)だから誇りを持って来年まだ甲子園をめざしてください。

もちろん高校野球にとっては甲子園は憧れであり夢です。<Br.

「甲子園行かなきゃ意味がない」という気持ちもわかりますが、今回大船渡は甲子園に行かなくても、名門であることをちゃんと実証しました。そして何よりも選手ファーストであることも実証しました。素晴らしい高校です。誇りに思ってください!

個人的にはあの震災の後、大船渡の避難所を体操アテネ五輪、金メダリストの米田さんと心のケアで回っていたことを思い出しました。

あの時小学生だった子たちが今は多くの人たちに感動を与えて活躍しているのですね。そう思うと感慨深いです。

すべての選手と指導者に心から感謝します。そして、スポーツを愛する多くの人たちに、災害もなく戦争もなく今年もまだ大好きな高校野球を楽しめる命があることに心から感謝します。