さて昨日に続き、「君の名は。」の心理分析、投影について考えてみますね。
みんなで映画を観た後に、

「あなたはどのシーンが一番気に入った?」
「どこがうるっとしたのか?」
「どのシーンで感動した?」

というのを早速、みんなで話し合ってみましょう。

ここからは作品の個性が現れます。

例えば時代劇テレビドラマ水戸黄門みたいなお話だと
やっぱり感動するところは、
黄門さまが印籠を出すところだと思うのですよね。

でも最近の作品はそれぞれに、それぞれが投影する箇所が
埋め込まれているから実に多彩です。「君の名は。」もそう。

実は私を含めた3人のカウンセラーはいろいろなところで、
感動して心が動いていたのです。
三人三様、好きなシーンは全く違っていました。

この映画の一番の見せ場は
瀧くんと三葉ちゃんがお互いを探しあい、姿が見えず、
ようやく、たそがれ時に出逢って、お互いの名前を
その掌に書きあうシーン。

まぎれもなく名シーンです。

確かにあそこは感動的にストーリー上はすばらしかった!

それはみんな同じでした。

けれど、他にも気になったところは?
と聞くそれぞれのこころの中に残るシーンは
少し違っていたようです。

例えば、私がぐっときたのは、
そのあと三葉が一生懸命坂をかけ下りながらなんとか
みんなを避難させようとしているシーン。

坂の所で転んで、すりむいて、
それで瀧くんの名前を忘れそうになって、
諦めそうになって、そして、そっと掌を見るシーン。

そのあと、また立ち上がって、
傷だらけのまま一生懸命駆けていき、
今まで通じ合わないと思っていた
お父さんと対面するシーン。

誰からも信じてもらえず、でも、
自分の信念に向って転びながら立ち上がり、
傷だらけになりながらも前に進み、
自分の想いを果たそうとする。

今までの三葉では考えられないような
アクティブなシーンに思わず、息をのみ
涙を流しました。

さて、他のカウンセラーはというと、
ひとりのカウンセラーはお互いの部屋で鏡の前で
ふっと相手のことを思いながら涙を流すというシーンが
とても感動的だったというのです。

あれ、そんなシーンあった?(笑)後からDVDを見返して、
あっ!なるほど、ここかと思いました。

相手を思いながら自分でも意識しないまま、
その感情が溢れて涙がでる。
そのシーンがとても印象的だというのです。

深いなあ。その人の心の深さと
繊細さが垣間見れて感動しました。

感情表現への願望との葛藤があふれてくるという想い、
それが浄化される気がしてグッとくるのかもしれませんね。

もう一人のカウンセラーはなんと、
三葉の友達のさえ子ちゃんが放送室で
町の大人たちにつかまって怒られて連行されていくシーン。

そこで叱られながらしゃくりあげている
放送室の女の子にとても共感し、
涙がでそうになったといいます。

一生懸命やっても理解されない悲しさ、
結局自分は役にたてないのかもしれないという
無力感がキーワードなのだと彼女は語ってくれました。

三者三様、いろいろなところで私たちは
心を動かされているようですね。

あれ、でも全て涙のシーン。
そう、泣いているシーンに私たちは
不思議と投影をしていたのです。

楽しいシーンではなく、
涙のシーンに投影するの?
それな、なぜ?